crocus
「どうした?」
「…お祖父様って怖くって、怒らせるともっと怖いんです。だから桐谷さんのお父様とか…、桜澤さん?とか…大変なことになってるんじゃないかなって心配で」
要は雪村さんの話を聞き、もう少しで笑いを含んだ息を吐き出しそうになってしまった。
怖れている人物の怒りの矛先が自分に向けられているのではと心配をするよりも、他人の身を按じる雪村さん。
自分に無い発想を持っているのと、あまりにも彼女らしさを表していた故に、心を擽られて吹き出してしまいそうになった。
なんとか堪え、道路が流れるフロントガラスに向き直ってから答えた。
「問題ない。あの人も爺さん同様、物凄いヤリ手だ。今頃お互い不利益にならないように手打ちしてるはずだ」
「……」
「信じられないか?」
「そ、そういう訳じゃないです!ただ、もしも万が一…何かあったら…と思うと」
わざと不服そうにすれば、慌てて否定する雪村さん。可愛い、とはこういう時に使うのだろう。