crocus
その出来事から、姉さんと父さんはお互いを空気のように思い、全く話さなくなった。
毎月第1と第3の土、日だけが母さんを見舞いすることが出来るのだけど、姉さんはそんなことが合ってから、平日の放課後にこっそり母さんのところに行っているようだった。
あの怖い父さんに真っ向から歯向かえる姉さんは強いと思った。要はいつも父さんと目を合わさないようにしていたし、姉さんと一緒に居るときに玄関の扉が開くと、慌てて宿題を取りに向かったりしていた。
その時から薄々、自分は父さんの会社を担う存在なのだと気づいていたから、習い事も勉強も全ては父さんの会社を継ぐためのものなんだと必死で取り組んだ。
半分は父さんに叱られないように、半分は父さんに褒めてもらえるように。
そしてとても寒い12月の第3土曜日。世間はクリスマス気分一色で浮き足立っていた。街には色とりどりのイルミネーションが飾られ、サンタのコスプレをした人達がケーキを売っていた。
その時、要と姉さんは母さんの病室にいた。幼い頃から、家のサンタは母さんだった。