crocus
そんな日々が続き、中学二年に進級前、母さんの一年忌が執り行われた。
要の自宅にはたくさんの親族や、お世話になった人達が大勢集まっていた。
1年経った今も母さんのために、こんなに集まってもらえるなんて、母さんがどれほど愛されていた存在なのかひしひしと伝わる。
もちろん母さんのためじゃなく、父さんに媚びを売りに来た腹黒い大人だっているだろうけど。
休憩するために、離れの居間に行くと、鮫島がぽつんと座っていた。何やら様子がおかしい。
「鮫島さん、何かあったんですか?」
「要くん…、もう私は要くんの側にいることが出来なくなりました」
ショックな出来事が起こった時に、何かが崩れていく音が聞こえると言われるけれど、本当にそうなのだと俯瞰的に考えていた。
鮫島さんが、いなくなる
改めて言葉にして噛み締めるけれど、未だに現実味が無かった。
「出張とか、人事異動とか…ですか?」
鮫島さんは目を閉じて、ふるふると小さく首を振った。脱力した体をなんとか支えているように見える。
要は鮫島さんの近くに座り、鮫島さんが説明してくれるのを待った。
「先日、社長にリストラされました。来月には、無職です。12歳の子供がいるというのに…」
そんな、まさか、何かの間違いじゃ、ありえない…、言葉はいくらでも浮かぶのに、事実なのだろうと信じ始める自分に腹が立つ。