crocus


「鮫島さんみたいな優秀な秘書が…勧告された理由は…?」

「私が社の極秘の顧客リストを他の社に売ったという在らぬ疑いを掛けられたんだ…」

「そんなのいくらでも無実を証明出来るでしょう?」

「いえ…実際問題は…私が要くんと親しくしていることが悪影響だと思われたのでしょう。知っての通り、社長は腹の中では誰一人として信用されないお方ですから。要くんにも同じようにそれを貫いて欲しいのでしょうね」

父さんは邪魔になったからと言って、いきなり鮫島さんの首を切ったていうのか?

その時、縁側から父さんの姿が見えた。要は靴下のまま地面に降りた。夢中で追いかけていたため、石ころが食い込む痛みも感じない。

「父さん!!!鮫島さんをクビにしたっていうのは本当ですか?」

「…あぁ、だから何だ」

「理由を、正直な理由を教えてください」

何を考えているのか読み取れない表情で、目玉だけが要を見下ろした。


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