crocus
だけど高校3年の時に、見知らぬ教育実習生にいきなり話しかけられ、奇妙な掴めそうで掴めない不思議な空気を纏った女顔の男は、開口一番に突拍子もないことを言った。
「私、カフェのオーナーがしたいの。だから経営のために桐谷要くんの知恵を買い取らせてくれないかな?」
それがオーナーとの出会いだった。
要は悩みに悩んだ末に、オーナーが教育実習を終える日に答えを出した。
答えは知っての通りYESだ。
経営面を担当することで、今まで培った知識を実践で活かせるチャンスだと思ったし、更なるステップアップにも繋がる。
それにいつか父親の鼻をへし折るための貯蓄も出来る。要にとって好都合なことばかりだった。
オーナーと交わしたのは、余計な感情に流されることなく、手っ取り早く目的に近づける『契約』というこれ以上ないシンプルかつ合理的なものだった。