crocus

行き着いた場所は物置小屋のような倉庫が、ずらりと10棟くらい並んでいた。

一番近くの扉を開こうとするも、ガシャガシャという音が鍵がかかっていることを示した。

だんだんと大きくなる警備員の足音に焦りながら、雪村さんと手分けして開いてる扉を探した。すると運よくスルスルと開く扉を見つけ、中は真っ暗な倉庫だが半ば強引に雪村さんを押し込んだ。

恵介も中に入り、地面に落ちている手頃な石ころを拾った。それを金網のフェンスに向けて思いっきり投げて、そちらへ注意を引き付けた。

それからなるべく音をさせないように扉を閉める。後は気づかずに通りすぎてくれることを願うだけだ。

「あっちで音がしたぞ」

「フェンスを跨いで逃げたか?」

「しかし、女は着物を着ていた。まだ、もたついてるかもしれん。行ってみよう」

扉一枚向こうにいる警備員の会話を息を止めて聞いていた。バフ、バフ、バフと感じたこともない鼓動が波打ち、その音を気づかれてしまうのではと、さらに焦ったが上手く誘導出来たようだ。

雪村さんの状態が気になり、後ろを振り向くも、自分が目を開けているのか疑うほど真っ暗だ。


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