crocus
生活感がない上、物が少なすぎる。必要最低限の家電はあるものの、まだ何かが足りない。それが何なのかは、分からないけれど。
「先生引っ越したばっかり?」
「えっ?あっ!そう、そうなの!で、でも料理に必要か器具は揃ってるから問題ないない♪」
「ふーん、ま、いいけど」
腑に落ちないが、先生のプライベートにこれ以上踏み込んでも仕方がないと、余計な詮索は止め、早速、恵介は手を洗って、エプロンを着けた。
「何を作りたいんですか?」
「そうだなぁ。あっ、酢豚とか!」
「いや、材料多いし、初心者なんだからもっと簡単な物がいいんじゃない?」
「ううん!目標はうんと高い方が頑張りがいがあるし、達成感も大きいと思うの」
先生のやる気に満ちた目の輝きは、自分を見ているようだった。