crocus


恐る恐るべちょべちょの何かを口に運ぶと、恵介は箸を静かに置いた。

「…先生、素晴らしいですね。僕、正直先生のこと舐めてました」

「えっ!うそっ?まさかのビギナーズラック降臨!?」

ガッツポーズをして期待に胸を弾ませる先生に、恵介は笑顔を見せた。

「本当に驚きました。ここまで食材の味を殺せる料理作れるなんて」

「えっ…?」

無理にでも作り笑顔でもしてなきゃ、先生に向かって酢豚の皿を投げつけてしまいたくなる衝動に勝てそうもなかった。脳内では、もちろん100回はぶつけた。

「あれ…先生が3人見える…」

飲み込んだ何かが到達した胃袋は、異物浸入に激しく戦き、その後にも影響するショックを恵介に与えた。

このことをきっかけに、酢豚嫌いになった。先生の料理は凶器だ。

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