crocus
上田さんが元の位置に戻ると、その隣の上矢さんが、にこやかに微笑みながらピョンっと飛んで前へ出た。
「皆さんご存じ、上矢誠吾でーす!パティシエとして日々、奴隷のように働いてまーす。よろしくねー?」
ふわふわの金髪は天然のものなのだろうか、首をちょこんと傾げた上矢さんの髪がふわりと弾んだ。何となくいい香りがしそうだ。
上矢さんにケーキなど甘いものがピッタリのイメージではあるが、まさか本当にパティシエという道を極めた作り手だとは思わなかった若葉は、子供っぽいと思っていたことを心の中で謝罪し、尊敬の意を含んだ瞳で返事をした。
「はい!よろしくお願いします!」
「えへへー。僕の趣味は、おもちゃ集めでーす。あっ!今度、ガチャガチャしに行こうねっ!今は『マーボくん人形 星座シリーズ』を集めてるんだよー」
「そうなんですねー?ぜひ今度連れて行ってください」
上矢さんの部屋のコレクション達を思い出しながら、やはり印象通り子供のような部分も含め上矢さんなのだと知ると、愛らしさを感じて思わず笑みが漏れた。
「あー!僕のこと子供っぽいって思ったでしょー?」
ズバリと指摘され機嫌を悪くさせてしまったかなと戸惑えば、またもやオーナさんがさらりと言う。
「子供"っぽい"じゃないわよ。ガキよ、ガキ!もう22のくせになんだそのキャラ!天然ぶんな、帰れこの美肌!」
「それただ単にオーナーがのひがみ……」
「あぁん?」
上田さんがポソリと呟けばオーナーさんがその道の方のような低い声を出して脅した。
オーナーさんは怒ると低い声で笑いながら仕留める。
若葉は心の中で観察メモに記した。