crocus


もしかしたら僕が思う以上に難しい問題を1人で解決しに行ったのかもしれない。きっと要がいなかったら、手玉に取られて、戻ることも難しい事態になっていたかもしれない。それすらも覚悟して、家に戻ったんだろうか。

僕の言葉を間に受けたせいで。

そう思うとズシリとした罪悪感に胃が沈み、雪村さんの素直さに憎い気持ちに似た何かが手の届かない場所をムズムズさせる。

恵介は夕方から決めていたことを言えば、このモヤモヤしたものもスッキリするだろうと思い、唐突ながらも謝った。

「雪村さん、昨日はごめん…ね。でももうどこにも行かないでよ。…僕が責められちゃうじゃない」

僕ってまさかヘタレなのかな。こんな言い方しか出来ない。臆病って気持ちが僕にもあるんだな…。

中途半端な謝罪に一層、自分の中で蓄積した鬱憤が体内で舞い暴れる。痒みにも似た痺れに嫌悪していると、雪村さんは雪村さんでマイナス思考の深みにハマっていた。

「そう、っですよね…。結局は…解決も出来なくて…、橘さんに偉そうなこと言えた立場じゃないんです。自分が言われたらすごく耳が痛いのに…」

暗闇の中、彼女の表情が見えないから、先入観無しにその言葉だけに意識が向かう。隣から聞こえたそれに激しく同意した。


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