crocus
「で、要がいるのって…最上階だったりしないよね」
嫌な予感しかしない恵介がそれを言葉にすると、恭平も同じように1つの予感を遠回しに指摘する。
「…追いかけてるの元秘書さんだよな」
「秘書ってだけで上っぽい…」
琢磨の安直な偏見も、すんなり納得してしまう。
とにかくエレベーターで一気に最上階へ行き、しらみ潰しに一階一階要を探しながら降りることにした。
ポーン。エレベーターの到着音が聞こえ、誰か乗っていないか壁に隠れて様子を伺う。
中からスーツを着た1人の男が降りた。他にはもう誰もいないようだ。
「今、行って」
一番怪しまれない格好をしている三馬鹿に走らせて、扉が閉まらない内に駆け込ませた。
けれど、恭平が思いもよらない行動に出て、琢磨や誠吾までも足を止めた。
「哲平!お前、哲平だよな!?」
恭平はスーツの男の肩を荒々しく掴み、強引に振り向かせた。その彼は驚いてはいたが、すぐに固まり青ざめた表情になった。恭平の存在に怯えているようにも見える。