crocus
crocus 06
久しぶりに再会した哲平は、スーツがよく似合う男になっていた。
動揺がそのまま表に出て、うっかり口を滑らせたことは本当に申し訳ないです。すいません。
「恭平、何か困ってるんだったら…俺に出来る範囲で協力させてくれないかな?」
「えっ、でもよ…お前の会社だしさ…見なかったことにしてくれるだけでも有り難いし…」
「いいんじゃん?協力してくれるっつーなら。また裏切らないように近くで見張れるし?」
「琢磨っ!」
迷っていると、後ろから琢磨が刺々しい言葉で威嚇した。そんな琢磨を誠吾が制する。
琢磨は俺を思って、敢えてそう言ってくれているんだろう。でも、琢磨を悪役にさせたくはない。
「それはともかく、内部事情に詳しい人がいてくれるのは助かるよね」
恵介が歩み寄りながら会話に参加し、若葉ちゃんも姿を見せた。
「みなさん知っているんですね。俺が恭平にしたこと…。見張りも兼ねて俺を使ってください。…俺も決着つけたいんです。全ての過ちに」
深く腰を折って頭を下げる哲平。その姿に、ふとサッカーの試合前の挨拶を思い出した。変わりたい、終わらせたい、一歩踏み出したいのは恭平も一緒だ。
「俺からも頼む!万が一、億が一の時は責任は俺が取る」
「お前まで頭下げんなよ。何も言えねーじゃんか…」
目を伏せた琢磨は語尾を弱くさせた。すると、若葉ちゃんが恭平の腕を引っ張った。
「行きましょう、恭平くん」
「おうよ。急がねーとな!」
再びエレベーターに向かおうとすると、哲平が言葉を発した。