crocus

「今から3グループに分かれて探しましょう。それぞれ社長の息子さんの常務室、大島さんの奥さんの秘書室、大島さんの息子さんの専務室に行ってもらいます。桐谷さんを発見し次第連絡を取り合いましょう。どこにもいなかった場合は、社長室の前で落ち合おうと思います。それで……僕は方向音痴の恭平と組みます」

「ちょいちょーい!」

「詳しい人と張り切って迷う人が組むのは当然じゃないかな。僕は若葉ちゃんと組むよ」

恭平が大きな声で意義を唱えるも、さらっと哲平の意見に賛同した恵介はすかさず若葉ちゃんの肩を抱いた。油断も隙もない。

哲平が何気に方向音痴なことを覚えていてくれたことは少し感動した。

「じゃあ、僕は琢磨とー!」

「まぁそれはいいんだけどさ。今更だけど……要はさ、『鮫島さん』って人を追ってるんだろ?秘書の大島さんて誰なわけ?ここの社名『大島グループ』なんだからさ、大島さんて社長じゃねぇの?いまいち理解出来ねぇんだけど……」

琢磨は眉間に皺を寄せて、片手でペン回しをしながら哲平を見つめた。

スラスラと話す哲平の作戦を信頼するしかなく、丸々便乗していたから気づかなかったが、言われてみれば根本的かつ大事な疑問だ。

深く頷いた哲平はポンッと拳で手の平を叩いた。

「すみません、いつも大島さんって呼んでるものですから。説明するの忘れてました」

そういうと哲平は分かりやすく解説した。

鮫島さんは大島グループの社長の娘さんと結婚した際に婿入りしたそうで、鮫島は旧姓で、今は大島なのだと言う。つまり『大島さん』と、『鮫島さん』は同一人物。

そして鮫島さんの連れ子である息子は優秀らしく、今は専務という重役に就いているそうだ。

ちなみに社長の息子は大人の社交場で言葉を覚え、甘やかされて育ったらしく、常務という名ばかりの役職に就いているらしい。

会社もいろいろあるようだ。


< 408 / 499 >

この作品をシェア

pagetop