crocus
そんな哲平は右手の甲を唇に当てた。こんな仕草をするときは、自分に鞭を打って頑張っている時だ。小さな頃から変わらない部分を、恭平自身も見つけることが出来た。
哲平が言葉に出来るまで、恭平は静かに待った。
「俺…決勝戦の試合の数日前に、鮫島さん…今でいう大島さんに会ってるんだ」
「はっ?」
「俺が子供の頃、父さんはここに勤めてたんだ。鮫島さんはその頃、転職すると同時に大島社長の秘書になって、父さんの上司の立場になったんだ」
哲平は時折、言葉に詰まりながらも当時のことを打ち明けてくれた。