crocus
恭平はただ黙って、放送ブースで背中を押した哲平の表情を思い浮かべていた。すると、腹の底から沸々と湧き上がる思いがあった。
「結局、大島グループの息子がいるチームに俺達のチームは勝った。とても試合に集中なんて出来なかったけれど、それでも俺が何かをしなくたって、実力の差は埋まってなんかいなかったんだよ。何のために圧力に屈したんだろうって、本当に…自分が嫌いになったんだ」
耳では確かに哲平の声を拾っているけれど、理解しようとするよりも、もっと他の気持ちが体中を熱くさせていく。
「今だって…父さんのコネを使って、ここで働いてる。自分を好きになれないまま、大事な人間を作ることに怯えたまま…けど今日、恭平に会って、変わりたいって思ったんだ。お前の周りには、たくさんの仲間がいて、お前はやっぱり誰かのために走ってて…、恭平が恭平でいてくれて嬉しかった」
「…んで…よ」
「えっ?」
「…なんで言わなかったんだよ!!今まで1人で全部抱え込んでさ!お前バカじゃねぇの?ドMか!…俺はお前の何なんだよ!!俺は…俺はさ…」
全身に駆け巡る、怒り、後悔、脆弱、悲しみが抑えきれず、床を拳で何度も何度も殴って発散させた。