crocus
鮫島さんの言う通り、母さんや鮫島さんのためにと、父さんに復讐するためだけに努力してきた。それは紛れもない事実だ。
「もし本当に父が僕のために嘘を作ったとして、隠された事実は何なんですか?」
「…要くんは、僕が解雇された理由を覚えてる?」
「会社の極秘の顧客リストを他の社に売った…ですよね」
鮫島さんは正解とでも言うようにニヤリと笑う。そしてすぐさま要の頭の中で1つの憶測が浮かんだ。
「まさか…本当にしたんですか?そして…それを売ったという会社は、ここですか?」
「ご名答。僕は値段にして20億はくだらない情報提供を条件に、ここの第一秘書になったんだ。でも実際には、その前にバレちゃってね。でも…僕には1年かけて手懐けた保険があった」
「それが…僕ですか」
「そう。桐谷社長に言ったんだ。『信頼していた人間が、忽然と姿を消したら?しかも実は自分を利用するために近づいたと知ったらどれだけショックなんでしょうね?』って」
くくくっと息を殺して笑う鮫島さん。その光景が突きつけられた新事実の衝撃にぐらりと歪む。