crocus

「そこで恭平の様子を見た先生は、鮫島さんに話し、それが哲平さんに伝わったということですか?」

話が反れそうなところを、桐谷さんが要点を纏めてくれた。 健太さんは、慌てて首を横に振った。

「父さんは、菜緒子さんのお父さんに取り入るために、その息子である淳史さんをサッカーの地区総体で優勝させたかった。そして、菜緒子さんが新米教師だったことを知ると、揺さぶりをかけて喋らせたんです」

「健太くんっ!もうそれ以上は…。話してしまった私が悪いんです!上田くん本当にごめんなさい!」

健太さんを制した先生は、恭平さんに向き直り、深く深く頭を下げると、スルスルと長い茶色の髪が流れ落ちた。

「いやぁー!頭上げてくださいよ、先生っ!どういう経緯で知られたのか確かに気になってたけど、俺にはもう新しい仲間も、親友の哲平もいるんで!…あと、暗い所は恐くないって教えてくれた女の子も…なっ!」

目尻と口角をめいっぱい寄せて、両手の親指を突き出して、恭平さんポーズをこちらに向かってしてみせてくれた。

本当に本当に純真な笑顔で、思わず若葉も笑いながら同じポーズで返した。告げられる真実に、怯むことなく笑う恭平さんは自信に満ち溢れていて、すごくかっこいい。

親友と言われた哲平さんも、どこか嬉しそうで、頭をチョコチョコと掻いていた。


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