crocus
先生は、きっとずっと罪の意識に苛まれていたのだと思う。恭平さんの笑顔を見て、安心したのかポロポロと泣き出してしまった。
「…これ、使ってください」
若葉が先生に近寄り、ハンカチを差し出すと、頑張って笑顔を作って「ありがとう」と言ってくれた。
次第に明るみになる鮫島さんの脅迫や、揺さぶりの数々。言い知れぬ嫌な予感は、まだまだ続く。
「それから誠吾くん。覚えてるかな?僕ら同じ幼稚園だったんだよ?」
「へっ?そう、なんだ…。ご、ごめん…覚えてないや…。僕、その頃から変人扱いされてたから…」
小首を傾げて、なおも微笑む誠吾くん。だけど下がった眉を見れば、無理していることは明白だった。
「うん…。霊が見えるって噂だったよね。そしてお母さんが迎えに来たときは、すごく嬉しそうな姿も、仲良く帰っていく姿も、僕はよく覚えていたんだ」
健太さんは、目を瞑って、静かに息を吐いた。人に何かを告白するってすごく精神を削ることだ。それを繰り返している、健太さんはどれほどの勇気を振り絞り続けているんだろうか。
「だから僕は、…ある人物の葬儀で誠吾くんのお母さんを見つけて……つい父さんに言ってしまったんだ。『あの人の子供の誠吾くんは霊が見えるんだって』って…」
それを聞いただけでは、何にどう繋がるのか分からない。けれど、誠吾くんは何となく理解し始めているような、そう思わせる微笑を浮かべた。