crocus
息をすることすら健太くんの声を聞き取れなくなりそうで、口元を手で押さえながらただただ話しに聞き入った。
「悠一さんは何度も父さんに忠告してくれました。だけど聞く耳を持たない父さんは、私利私欲のために独走し続けました。
そして僕の頼りにしていた悠一さんは、千春さんと一緒にある日突然亡くなったんです。
父さんにとっても幼馴染みが亡くなった出来事で、さすがに落ち着くだろうと思っていたけれど…、そんな葬儀の日にも、霊感体質の男の子の話しに食いついていました。
クロッカスのみなさんに共通していることは、全て今からちょうど10年前の父さんの愚行による被害者ということなんです」
全ては同じ10年前の出来事…?
桐谷さんの元から鮫島さんがいなくなり…。
恭平さんは、決勝戦直前で閉じ込められ…。
琢磨くんは、裏切り行為を装った親友が突然引っ越し…。
橘さんは信頼していた先生に利用されていたと思わされ…。
誠吾くんは、隠していた能力を学校中に晒され…。
そしてお父さんとお母さんが亡くなったのも、ちょうど10年前。
その面々が奇妙な巡り合わせで、ここにいること。それは誰の導きかと言えば……オーナーさんなのだろう。だけどそれ以外の大きな磁力も感じる。
健太さんの言葉をそれぞれが反芻し、必死で飲み込もうとしていた。だけどあまりにそれは大きすぎる偶然の塊だった。