crocus
「そんな……」
そんなことを言われれば、まるでお爺様が私を愛してきたみたいに聞こえてくる。
嫌われているからこその、お爺様の行動だと思い込んできた。
いいように解釈してしまいそうな戸惑い、その半面、愛されていたと思いたいと自分の中で小さな期待が生まれている。狭間で揺れる若葉はお爺様の瞳の中から答えを探した。
「若葉だけは同じような悲惨なことにはさせまいと言い聞かせてきた。だけど、それはもうあんな悲しい思いをしたくない私のエゴだった。それを…あなた達に気づかされた。若葉は千春じゃない。若葉には若葉の人生があるのになぁ……」
「お爺様は……私が大切だったんですか?」
いざ声にしてみればカッコ悪く震え、お爺様の顔は涙で滲んでいく。
小さな期待はほぼ確信に変わり、より明らかなものにしたくて尋ねたのに、欲しい答えが決まっているなんてズルいかもしれない。
「当たり前じゃないか。可愛い娘の子供だ。愛さないわけがないだろう?」
嬉しくて、嬉しくて…。若葉は形振り構わずお爺様に抱きついた。若草色の着物からは、太陽の匂いがした。きっと次々に吸い込まれていく涙も太陽の匂いに変わるんだろう。
壊れ物を扱うかのようにぎこちなく慎重な手は、若葉の頭を何度も何度も行き来している。
「私は知ってるよ。…お前が私のしてきたことに耐えてきたのは、私が悲しんでいることを幼いながらに分かっていたんだろう?若葉が誰より不安で寂しいだろうに、私は若葉の優しさに甘えてきた……本当にこんな弱い祖父で、すまない」
「…っ」
そんなことない。もう謝らなくていい。
言いたい言葉はいくらでもあるのに、急激に軽く温かくなる胸を押さえ、首を振るだけで精一杯だった。
「……馬鹿みたいにお人好しの悠一くんと、笑顔がよく似合う千春のような花屋さんになりなさい」
「………いいの?お爺様…」
勢いよく顔を見上げれば、お爺様はニッコリという言葉がぴったりな笑顔を返答にした。