crocus
「それがお前の夢、なんだろう?」
再確認するように改めてお爺様に問われた。若葉は迷うことなく頷いた。
「そうです。私はお父さんとお母さんみたいな温かい花屋になりたいです」
お爺様は納得したように何度もウンウンと首を縦に振った。すると、一瞬の間を置いて歓喜の声が飛び出した。
「……ぃやったああああぁぁ!!!」
振り返れば、クロッカスのみんなは自分のことかのように喜び、ハイタッチしたり、肩を組み合っていた。
鮫島さんと健太くんも、こちらを見て満面の笑顔をくれた。
「…………」
「…オーナーさん?」
1人俯いているオーナーさんが心配になり声をかけた。するとくるりと反転し、背中を見せてしまった。右腕を曲げたところを見れば、涙ぐんでいるのだろうと悟ることが出来た。
だけどそれを放っておくわけがないのが、クロッカスの面々だ。
「えっ!?オーナー泣いてる!」
「うわっ、本当だ」
ひぇ~、と冗談混じりに、みんなが揃ってからかっている。
「……ら……い」
「え?なんだって?オーナー!」
数メートル離れているクロッカスのみんなには聞こえなかったようだけれど、近くにいる若葉にはオーナーの呟きがはっきり聞き取れた。
帰ったら全員処刑、と。