crocus

朝食を済ませた後は、店員さん達は無駄のない動きで準備に入った。

上矢さんは見てる方がハラハラするくらいに冷蔵庫から多くの材料を運んでいる。

桐谷さんはレジの準備と、帳簿のようなものと電卓を交互に睨み合っていた。

上田さんはコーヒーカップをピカピカに磨き上げたり、何種類ものコーヒー豆の香りを真剣な面持ちでスンスンと嗅いでいる。

橘さん……は、あんまり見つめていると不快な思いをさせそうだったので、盗み見るようにチラリと確認すれば新鮮野菜をツヤツヤになるほど丁寧に水洗いしていた。

「ほい!お待たせ。これでテーブル拭いてな?若葉はカウンターから頼む」

真っ白な濡れた布巾を受け取ると、「はい!」と返事してカウンターの端から顔が映るくらいにピカピカに拭いていった。

しかし若葉には気になることが一つ。みんなはダブリエやシェフの格好をしているのにもかかわらず若葉だけは私服だったのだ。


< 55 / 499 >

この作品をシェア

pagetop