crocus
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「短い短い短い短い…」
自室で着替え終わった後、ゆっくりと軋ませないように階段を下りていく。一通り心境を呟いて、1つ深呼吸をしてから店内を仕切っている暖簾をめくった。
「オ、オーナーさん…」
弱々しくなるべくオーナーさんにだけ聞こるように呼びかけるが、残念ながら全員が(橘さんまでもが)若葉へと視線を向けた。
静まり返る店内に、自分の体温がぶわっと熱くなった。オーナーさんに手渡された紙袋の中には、いわゆるメイド服というものが入っていた。
王道と言っていたのは、白黒の色のことなのだろうか、このひざ上の丈のことなのだろうか…。ただ単にメイド服ということなのか。
裾の部分は2段にレース使いになっていて、白のエプロンには惜しげなくフリルが施されている。
腕の部分はキュッと絞られたパフスリーブで、少しむず痒さも感じる。
膝丈の真っ黒の靴下の上にもご丁寧に白のフリルがふんわりとついている。
正直、心のどこかでいつか着てみたいと思ってはいたけれど、いたたまれない空気にひざ上のエプロンをキュッと握り締めた。