crocus
視線が合った途端にお互いに逸らしてしまい、火照り続ける頬をどうしていいか困っていると、オーナーさんがふぅっとため息をついた後に単語を並べた。
「琢磨、コロス、後ろ」
「あ?」
オーナーさんに言われ琢磨くんが振り返ると同時に若葉も正面を見ると、すぐに鈍い音が隣から聞こえた。
「いっっってぇぇ!!」
琢磨くんに当たって床に転がったものを視線で追うと、それは木製の丸いトレイだった。
「琢磨くん!?」
皿を座っていた椅子の上に置いてから、すぐ傍でうずくまっている琢磨くんの元に同じように屈んだ。
木製のトレイが飛んできた方向を確認すれば、フーフーと興奮して瞳をギラつかせている上矢さんと上田さんがいた。
一体どうしたというんだろう……と、若葉が状況を把握出来ずにいると、オーナーがポツリと右手の親指を立てながら満足そうに言った。
「グッジョブ!」
「グッジョブ……じゃねぇだろぉ!」
ガバっと勢いよく立ち上がった琢磨くんの顔面を見上げると、見事にトレイの円形状に赤くなってしまっていた。
「クソオーナー!わざと後ろ向かせやがったな!ちくしょー……痛ってー!許さねぇぞ、誠吾!恭平!」