crocus
健太と琢磨は小学1年の時に同じクラスメートとして出会った。
健太は大人びていて、勉強は出来るわ、物知りだわで……当然女子にモテていた。
そんな健太の存在は、ないない尽くしの琢磨の目には、ただのいけすかねぇ奴、と映っていた。
けれど本当はただのヘタレで、バカみたいにすっげぇ優しい奴だと分かれば、嫌なことを押し付けてくる奴らからフォローに回ってやったり、シャキっとしろと渇を入れ続けてきた。
そうやってずっと一緒に過ごしていた。
クラスが違っても、土日だろうと、遊んでいる時は気がつけば隣に健太がいた。2人だけで遊ぶ日もあれば、近所の友達集団で遊ぶ日もあった。
そんな中、健太は習い事が始める前や、門限の前になればそわそわとしだす。
帰らなければならない意思を2人でいるときは切り出せるものの、何人か友達がいるところでは空気を読みすぎてなかなか言い出せないのが、健太。
そんな時は決まって琢磨が、少し大きめに声を張って「そろそろ帰る時間じゃね?」と、そう促してやれば、健太が一瞬だけ気まずそうに顔をしかめる。
琢磨に助け舟を出されることが健太にとっては、弟に助けられたような気分になるらしい。
なんで弟なんだ。
兄貴だろうが……と琢磨は常日頃腑に落ちないでいた。