crocus

とにかく走って走って健太のあとを追った。健太の家、学校、海岸…思い当たる場所はくまなく探し、通行人にも尋ねてみたけれど健太の姿を見つけることは出来なかった。

もう日が暮れる。

山頂付近に位置する太陽は未だにしつこく肌をじりじりと焦がして、かいた汗のせいで服が肌に張り付いて気持ちが悪い。

健太のこと、マキオのこと、ほんのりと宿題のことを考えれば、胃がズシリと重くなっていくのを感じる。

もう健太の家の前でずっと待ち伏せしている方が確実かもしれない、そう思って若干の近道になる公園内を突っ切ろうとすれば、ずっと探していた人物の見慣れた猫背があった。

健太だ。

健太が去った川からそんなに離れていないこの公園。先ほども初めの方に探した公園だったのに、どうしてここにいるのだろう。戻ってきたのか、見過ごしていたのか。

そして健太の前には高校生らしき男が2人。制服のズボンの上に、蛍光ピンクのTシャツの奴と緑のTシャツの奴。

「なにやってんだ、あいつ…」

ドジだからぶつかってしまって因縁をふっかけられた?それとも身なりは、いいとこのボンボンみたいに小奇麗だからカツアゲされてんのか?

目の前の光景から考えられる状況を考えてみたけれど、どんな原因であっても自分がすることはあの場に助太刀に入ることに変わりはないわけで。

そう思って駆け寄ろうとすれば、その瞬間見た光景に足が硬直して地面から離れなくなってしまった。

健太がマキオを高校生2人に渡していたのだ。汚らしい笑みを浮かべて高校生2人はマキオを撫でている。

あぁ…そういうことか…

「…健太」

「あぁ…琢磨」

「あぁ…じゃねぇよお前。俺、分かってるから。そこどいてろ…」

「なにを分かってるっていうの?」

ゆらりと振り向いた健太は、口端に笑みを持たせて少し呆れたようにそう言った。

「だから…お前、こいつらにマキオを奪って持ってくるように脅されてたんだろ?いつからだよ?ここんとこ様子がおかしかったもんな…。ごめんな、気づいてやれなくて…でももう大丈夫だからな」

だからよ…いくらビビってるからって、蔑んでるみたいに笑うのやめろよ、健太。ぶっとばすぞ。

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