にがいの。
「…おじゃまします」
「ど、どうぞどうぞっ!散らかってるけど!」
付き合って1ヶ月足らず。
周りからは似合わない、なんでつき合ってんのと散々言われたけれど、あたしたちは未だに続いていた。
…あたしだって不思議でしょうがないけれど。
付き合って初めての、一人暮らしの彼の家。
「………」
「あっ、お茶でも飲む…?」
こんなに狭い場所があるなんて、初めて知った。
「麦茶しか、ないけど…」
「紅茶がいい。」
「…あ、ごめ…!すぐ買ってくる…っ…」
「…もういいよ」
はぁ、とため息一つと共に、部屋の隅のベッドに腰掛ける。
ひんやりした固い板が、ギィッと鈍い音をたてて軋んだ。
…いかにも、年代物。
ベッドと呼ぶにはあまりにもふさわしくないと思う。
「…何つっ立ってんの?」
行き場を無くしたようにオロオロしている目の前の彼。ここ、あんたの家でしょって思わずつっこみたくなる。
ポンポン、と隣を叩いて座るように促して、やっと彼はベッドに浅く腰掛けた。
二人の間に、人ひとり分の間隔。
隣を見ると、やっぱりそこにあるのは真っ赤に俯いた、彼の横顔で。
もちろん手も触れなければ、目線も合わない。