恋ってよんでもいいですか?
「あーなんか…あたしお兄ちゃんの妹だってちゃんと名乗ったんだけど。


勘違いしちゃったのかな?


名前違うのも親が離婚したからだって説明したんだけどさ、さっきこれ置いて行っちゃった」


そう言ってさくらが差し出したのは俺がわこちゃんに渡したこの部屋のカギだった。



勘違いじゃない、むしろその方がいい。


でも…決定的


ああ、わこちゃんは知ってたんだ、さくらのことを。


さくらが春樹の彼女だってことを。





通じない電話を握りしめて俺はマンションを飛び出した。


炎天下、立っているだけでくらくらしそうなくらい照りつける太陽を背にわこちゃんを探す。


この暑さ、そんなに遠くへは行けないはず。


懸命に走って行きついた先、ゆらゆらと歩くわこちゃんの後姿を見つけた。


わこちゃん


いくら呼んでも気づかないわこちゃんに駆け寄りその腕を掴むとそのまま熱くなった身体が俺の腕の中に落ちてきた。
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