アイ・ドール

「あんな外資なんかに買収されなければ、追い詰められる事も――――効率だの成果主義だのと、目先の下らない目標の為に互いに啀み合って家庭が崩壊したのは、バカでアホで、社長室で秘書をはべらかしてにんまりしてる社長の罪。社員達の心なんて何にも考えなくてさ――社長に擦り寄る上層部も同罪だって――――気がついたら商品、盗んでた――」


 戻った生気が、怒りに変換されて語気を強めるアリス。



「罪悪感なんて、なかった。復讐してやる――たかが1個や2個、商品盗られたって上のヤツらなんて痛くも痒くもないんだ。アンタらが無能だったからアリスはメチャクチャにされた。アリスがどれだけ商品盗んだって、お前らにアリスを裁く権利なんてない。アリスに対して償いきれない罪がお前らにはあるって――――だから、復讐だったんだよマイマイ――」



 自身にも、彼らにも向けられたものなのか、呆れた様に薄く笑ったアリス。





「あの川井出って店長、危ないよ。限界って感じだった――アリス、ちょっと辛かった。多田坂も同じだね、二人とも可哀想に――」



 アリスに駆逐され、打ち拉がれている二人の姿が浮かぶ――。

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