アイ・ドール
「マイマイが本当に来てくれて、そしてアリスの事を叱ってくれて嬉しいっ――」
いつもの人懐っこい、誰からも愛される笑顔と清らかな瞳で言った。
「わかってくれて、私も嬉しいわ――」
愚かな行為はもうしない――アリスの笑顔で確信した。
「えへへっ――」
「どうしたの――」
両手の拳を組み、手首を左右にくねくねと動かし、意地らしく私を見つめる。
「何か似てるんだ。楽しかった頃のママにっ――好きっ」
「えっ――」
「でねっ、マイマイっ」
「何――――」
まだ隠し事があるのか、身構えた。
「えへっ、パフェ、追加してもいいかなぁ――」
「ふぅ――」
何処までが真実で、何処までが虚構なのか。その境界線の狭間でアリスに弄ばれている感覚――。
それを、悪くないと思ってさえいる私。
状況に応じ、陽と陰の顔を巧みに使い分けるアリス――地獄を体験した彼女なりの生きてゆく為の処世術なのか。
その狡猾とも思える戦術さえも、愛される力へと変換させ、結果、何処か憎めない性格と、少女の可愛らしさが同居している不可思議な国のアリス――。