アイ・ドール
満月に問う――。
無論、月は何も言わない――。
「そうよ――――」
月が語りかけるなんて、ある訳ない――。
車の短いフロントノーズに凭れていた体を起こし、妙な私の行動を見ていたであろうドアマンに会釈した――――ほんの一瞬、目線を私に向け、すぐに厳粛な表情で元の位置に目線を戻すドアマン――。
何も見てません――勝手に想像したドアマンの気遣いに照れ、私はそそくさと車に乗り込み、マンションを後にした――――黒い緑の闇を、プロジェクターヘッドライトが切り裂いてゆく――。
「ふっ――――」
「でも、少しだけ期待していたのに――あなたの答えを――――」
「有るが儘のあなたでいいのよ――――」
「なんて――――」
全く――――
「都合の良い女だわ――――」