アイ・ドール

 得意な分野で協力し、助け合う。その点で流花は積極的に貢献している。葵も理解はしているが、上手く感情を制御しきれていないのだろう。


 言い争う二人の声が大きくなる――。


「葵もモコも、いい加減にして――」

「だってぇ、マイマイぃ、皆が流花ちゃん流花ちゃんって――んもぅ、葵だって流花ちゃんにダンスの事を聞きたいのにぃ――」

 ねだる様な甘い声で、ルームミラー越しに私に訴える葵。

 私は何も言わず、少し厳しい目線を葵に返し、視線を前方に戻した。


「むむううぅっ――」

 可愛いくも、恨めしそうに葵は唸る。モコも黙っている――。

 助手席の雪は、俯いて恐らくは寝たフリをしている。


 車内の雰囲気は最悪だ。



「ふあぁぁぁっ――」

 アリスが、目覚めた。


「んあぁ――もう、葵ッチもモコッチも、流花ッチがどうのこうのってうるさくて眠れないじゃん――」

 欠伸をしながらアリスが言う――明らかに不機嫌な御様子だ。


「だってぇアリスぅ、葵も流花ちゃんに色々教えてもらいたいのにぃ、皆が流花ちゃんを取り合いっこするからぁ、葵だけ何か仲間外れみたいなんだもんっ」

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