アイ・ドール
葵が上塗りした甘声で、アリスに助けを求めた。
「別にいいじゃん。ダンスの時ぐらいこっちに流花ッチ回してよ――」
素っ気ないアリス――しかし、少し間を空けてとんでもない事を口にする――。
「だって葵ッチ、流花ッチとつき合ってるんでしょ――そりゃぁ、いつも二人でべたべた一緒にいれば、アリスらもバカじゃないんだから、皆とっくに気づいてるし――」
運良く赤信号で停止していて良かった。
振り返った――アリスを除き誰も私と目を合わさない。雪も、あのままだ。
アリスの言葉は真実なのだろう。
「青だよ、マイマイ」
アリスの指示で車を発進させる――。
「マンションに着いたら、マイマイ、葵ッチ、流花ッチの三人でどうするか話し合えばいいじゃん――ねっ、マイマイっ――」
私が解決しろ――という事か。自身の問題を救ってくれた私に対するアリスなりの信頼の証なのか。ちょんと舌を出し、「ねっ」と後押しする表情が、ルームミラーに映る。
「葵も流花も、それでいいわね――」
「うん――」
切ない二人の返事――アリスは私にウインクすると、再び眠りに入った。