アイ・ドール

 南に面した大きな開口部からは、六本木方面の夜景が広がる――。


 私の来訪に、やや驚いた表情の詩織と万希子さん。

 葵が、半泣きで「ウエスト」に繋がるドアを開け、消えた――。


「待って、葵ちゃん――」

 流花が追う。


「何かあったのですか、舞さん――」

 万希子さんが尋ね、他の三人の視線も私に集中する――。


「葵と流花にちょっと話があって――そんなに込み入った事じゃないから、心配しないで。私も、話が終わったら勝手に帰るから、皆は休んでいて――」



「はぁ――」

 何処か気の抜けた万希子さんの返事――覆い始める言い様のない重苦しい雰囲気。


 アリスの見立て通り、二人の関係を全員、それとなくわかっているらしく以後、皆は黙り込んでしまった――。



「それじゃぁ皆、おやすみなさい――」


 何とも形容し難い表情のメンバーに見送られ、「ウエスト」に繋がる通路を進む――。



「流花、葵、何処にいるの――」


 照明が消えている暗い廊下を歩いてゆく――探り当てたドアを開けると、煌めく夜景が私を照らすリビングルームに辿り着く。ここのからの景色も極上だ。

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