アイ・ドール

「こっちだよ、マイマイ――」


 囁く様な流花の声に導かれ、リビングルームを抜けて更に廊下を進むと、ドアが開いた部屋へと行き着く――二人はその部屋にいた。15帖程のベッドルーム――葵はクイーンサイズのマットレスに体を投げ出し、俯せで泣いている。流花がマットレスに腰かけ、葵の背中を優しく擦り、介抱している――。


 部屋の窓から注ぐ夜景の光で、二人の表情は伺えた――隅にあった椅子をベッドに引き寄せて座り、私は二人と対峙した。

 明日も終日、ダンスレッスンの予定が組まれている――長く時間はかけてもいられないので、問題の核心を突いた。


「あなた達、つき合っているって本当なの――」


「うん、本当だよ――かなり深いよ――」

 流花が意味深に答えた。

「深いって、どういう事なの――」

 単に、いちゃつく程度から互いに愛し合う関係まで、段階は様々だが、「深い」と言った流花と葵の関係に、私が考えていた段階との差を感じた。


「要するに、お互い本気で好きでつき合ってる――恋愛関係なんだよ――」

 怪しい眼で流花が言う。

「それって――」

「わかってるくせにマイマイ――」

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