アイ・ドール

「ごめんねマイマイ――もっと早く相談すれば良かったね――」


 泣きながら葵が言った。

「そうね。でも、きちんと他のメンバーに配慮してくれるなら――そう、認めてもいいわ、二人の関係を――その様子だと社長にも話をしていないのでしょう――」


「うん――」

 気まずそうに流花が頷く――。


「いいわ、この話は私の所で止めておくわ――ただし、またグループ内でいざこざが起きた時は、社長に報告する。この条件でどうかしら――」


「うん、ありがとうマイマイ――」


 流花の声が弾む――葵は言葉にならないのか、「うんうん」と首を縦に振る事で私の提示した想いを理解している――。


 かえって、都合が良いのかもしれない。得体の知れない「異性」という虫がつくよりも――。


 葵と流花については、リスクが回避されたのだから――他のメンバーにしてもさして心配はしていない。実際、私の見えない所で、対策が施されているのを感じてもいる。


「彼ら」の心は、繊細で移り気だ――「自分」以外の異性の影がちらつくと、瞬時に欲望の対象を切り替える。やがては、大衆の心も他の興味へと移行してしまう――。

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