アイ・ドール
「うっ――」
顔を背けた――。
視線の先に広がっている美しい夜景と、私が置かれている状況との対比――背けた私の顔を自身に向けた流花は既に全裸で横に寝そべり、腕を絡めてとろりとした眼で私を見つめる。
普段の流花からは想像もつかない溶けた瞳が気恥ずかしく、僅かな救いの可能性を賭けて葵を見上げた――。
「うふふっ――」
しかし、全裸の葵から染み出た感情に可能性は閉ざされた――物欲しそうな女とも、流花とも異なる葵の私欲で潤んだ瞳が、私を見下ろしていた――。
「屈辱」と「快楽」が融合し、悦楽へと至る夜が始まる――。
シャワーブース内のタイル張りの壁に凭れる――シャワーヘッドから出る湯は、私の体を洗い流す事なく排水溝へと吸い込まれてゆく――。
目を覚ますと、裸の体の上に上質なカシミアのタオルケットが、丁寧にかけられていた――葵と流花の姿はなかった。
起き上がり、ふらふらとした足取りで、ベッドルーム奥のパウダールームのシャワーブースに入り、纏わりついた快楽の角質を取り去る――。
手を見た――今も、葵と流花の乳房の感触が残っている――。