アイ・ドール

 いいえ――――この世界にも終わりはある――全ての出来事に、始まりと終わりは用意されている――。

 私は少女の心に問い、少女は私の心に答える。


 完璧な意志疎通――。




 いつ、終わるの――。


 それは――――。


 そう――もうすぐ終わってしまうのね――。


 あなたにとってこの世界は美しく、心地好い――あなたが心の奥で密かに描き望んでいたのかもしれない――でも、この世界で生きてはゆけない――――美し過ぎるの、この世界は――――。


 美し過ぎる――それって――――。


 あなたが戻る世界は、美しいものとそうでないものとが混在していないと駄目な世界――だから、あなたはこの世界で生きてゆけない――。


 私――ここにいたい――――。


 ここに残ったとしても、きっとすぐに死んでしまうわ――美しいけれど、ここは無の世界――何もかも満たされているかの如く、何もない世界――――。


 そんな――――。



 心の対話を交わしながらも、私は車を再び尋常ではない速度で走らせ、加速、減速、変速、操舵の行為を淀みなく行っている――。




 帰りましょう――。

< 173 / 410 >

この作品をシェア

pagetop