アイ・ドール
帰りたくない――。
ここに一緒にはいられない――この世界は、ひとときの休息の地――。
――――。
別れの時が近づいている――暗示する様に、道が左右に分岐している。
どちらかが、現実へと繋がる道――――少女は、何も語らず私の選択を待つ。
何故かはわからない――私は右方向へと少し車を進めた。
少女の手が、私の左手にそっと触れる――。
少女の手は、温かい――ふんわりと左手から全身へと温もりが広がり、心の芯がぽかりと熱を帯びる。
少女は、静かに首を振った――。
左へ行くのね――。
そう――――。
少女が答える。
少女を見た――自信と優しさと、別れの悲しさが混在する瞳で頷く――。
ステアリングを左へと切り返し、車を進めた。
別れの道――行く末は、現実の世界――――遥か先にトンネルが見える。
私の、ずっとこの世界に身を委ねたいという想いを嘲笑う様に、不気味に口を開けている。
回避する道は――ない。
トンネルが迫る――ならばと、ブレーキペダルを踏む。しかし、車は減速しない。
導かれている――。