アイ・ドール

 もう、私の意思とは無関係に車はトンネルへと進んでゆく――。


 覚悟の決まっている少女は、じっと前を見据えている。



 車は、トンネルに入ってゆく――私は、一切の運転動作を放棄した。強力な牽引力で導かれており、何をしても無駄なのだから――。


 トンネルの内部は照明がなく、重苦しい暗黒の世界が続く――。


 何も見えない――ひょっとしてとライトを点灯させようと試みたが、やはり無駄に終わった。




 出口らしき光が見えない――――不安になって、私は少女に触れようと、手で真っ暗な車内の助手席を探った――。


 そこにいる筈なのに、少女の感触がない――慌てる私の手――――もう少女は、彼女のあるべき世界へと旅立ってしまい、私の隣にはいないのか――。


「嫌――――」


 闇の車内で、少女の姿を弄る。



 ふわり――――。


 少女の手が、私の手に触れた――――少女は、私の隣にいた。不安に苛まれていた心が癒される。


 温かい手を、強く握った――。






 微かに光が見える――――私と少女の、心の旅の終着点が迫る――。



 これで、お別れなのね――。

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