アイ・ドール

 繋がっている左手に想いを込めた。



 忘れないで――――この世界が終わっても、あなたと私は繋がっている――。


 戻るのが、怖い――――私、見たの――――。


 涙が溢れ出る――少女は、意味深に頷き、しなやかな細い指先で私の涙を拭う――。



 迷わず進んでいいのよ――彼女達は、あなた。あなたの愛に応えてくれる存在。だから、愛してあげて――――そうすれば、あなたも愛される。


 愛する――――。


 あなたは、これまで愛という海原に出ようとしなかった。強要していたのね、相手から与えてもらう事を――――でも、これからは与える側になるのよ――大丈夫、怖くない。見守っているから――。


 愛を与える――――。


 そう――あなたには、これからも試練が幾つも用意されている。失敗や過去を引き摺って自分を罰しても時間は戻らない――あなた自身を押し殺してまで感情を抑制しなくてもいいの。時には、声を荒げて怒ってもいい――――それも、あなた――それも、人間――――。


 私は、自分の感情を表に現す事を憚っていた――殻に閉じ籠もる事で、自分の心に安定を築いていたのかもしれない。

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