アイ・ドール
綺麗な輝きは、吸い取られた者達の悲鳴が集約された嘆きの光なのだ――。
美しい、ロマンチックなどと、あたかも芸術品や愛の道具として嘆きの光を利用する――――その真実など考えもせずに――。
翻って、私がいるこの高層マンションから放たれる光は何であるのか――――ここに住む者の何人かは、嘆き放つ光の塔の支配者かもしれない。経済の樹から実る果実を得ている者もいるだろう――――数十年にも及ぶ十字架を背負う覚悟で、家族の住まいを得た者達も住み、生きている――――。
では、私は何なのか――――。
最上階を占有し、アイドール達と夜景を楽しんでいる私は何者なのか――。
単なる人間なのだ――。
アイドール達が、私の傍にいてくれる――それだけで自身が満たされている――――そんな人間に過ぎない――。
出世やカネに執着などない――礼子さんはそれらを与えてくれるが、私の生きる源にはならない――。
いずれ皆――――死ぬ――。
今の私には、礼子さんやミネルヴァから提示された死という終着点が、はっきりと見えている――故に、私欲が纏わりつく事などない――。