アイ・ドール
「可哀想な人達――」
眼下の道化師らに言った――。
「マイマイ、時間だよ――――」
詩織が言う――。
「そうね――行きましょう――」
彼女達が私を待っている――薄い皮を剥ぎ、人間性を失ってゆく我々とは逆に、日々を重ねる毎に真の人間性を発揮する私のアイドール達――――毎朝、産まれたてのアイドール達を観ると、私の心は踊り、力が漲る――。
今日はヴィーラヴの数少ないテレビ局へ出向いての仕事――めっきり減少した歌番組の年末特番に出演する。
テレビ局内は慌ただしかった――生放送の特番の後、1ヶ月程前の総選挙をくぐり抜けた「先生」達による、これも生放送の討論番組が続く番組編成によって、駐車場には早くも黒塗りの車が集まり始め、局側の位の高そうな人物が「先生」達を恭しく迎え入れている――楽屋も当然、「先生」達に優先的に割り当てられ、ヴィーラヴでさえ広いスタジオをパーティションで区切られた一角を楽屋として使用する存在に成り下がるのだ。局側も申し訳ないと思ったのか、他のアイドルやアーティスト達より「区画」を広く取ってくれてはいる――。
別にどうでもいい事。