アイ・ドール
現にアイドール達は、不満を口にする事もなく、寧ろ楽しんでいる風に見える――――モカ、モコ、雪やアリス達はそれぞれ仲のいいアイドルやアーティストを訪れる為、隣のスタジオの「区画」に飛んで行った――。
楽屋を占有する彼らにも、階級は存在する――大臣経験者や党の幹部クラスの者達は、きっと局側の重役室あたりに陣取り、皮張りのソファーに身を委ねているのだろう。その他大勢の「先生」らが私達が馴れ親しんだ楽屋を使用している――これがテレビ局側のしごくまっとうな「対応」なのだ――。
「いやぁ、何だか申し訳ないっ――」
番組プロデューサーの一人が心のこもっていない謝罪を口から吐く――。
「気にしないで下さい――結構皆、楽しんでますから――」
詩織が爽やかな声と心で答えた――。
「そう言って頂けると――――」
小刻みに頭を上下させ、詩織にへり下るプロデューサー。
「いいえ、本当に気にしないで下さい――」
詩織がプロデューサーの動きを止める様に両手を突き出して言う――。
「ったく、そっちには謝って、こっちには謝罪なしかよっ――」
荒々しい声が響いた。