アイ・ドール
パーティションの向こう側で、放たれた下品な声――。
「と、とんでもない――今から伺おうと思ってたんですよ――」
素早く身を翻したプロデューサーは、足早にパーティションの向こう側へ消えた――。
「どういう事だよ、あんなバカアイドルよりワタシの所に真っ先に来るのが筋だろうがっ――」
「いやぁ、全くその通りです――すいません――」
私達と同じ口調で、相手を鎮めようとするプロデューサー。
「テメェ、口先だけでワタシを説得しようなんて、あめぇんだよっ、バカがっ――」
「いやぁ、さすがですなぁ」
「何がさすがなんだよっ、意味わかんねぇっつうの――」
「まぁまぁ――」
このスタジオは3つに区画され、他のスタジオに比べれば優遇されてはいる――私達の向かいに一番広い区画を割り当てられた声の主が、隣はヴィーラヴの妹というコンセプトを掲げ、2ヶ月前にデビューしたアイドル達の区画があり、彼女達はその声に怯え、身を縮込ませていた――。
通常、アイドルとアーティストの頂点同士の楽屋を同じ空間に配したりはしない――そこに考えも及ばない程、局側も混乱していたのだろう。