アイ・ドール

 いや、ひょっとすると声の主を嫌うアイドルやアーティストらの意見に押し切られ、結果私達と一緒にした方が案外、上手くゆくと目論んでいるのかもしれない――。



「怖くない――大丈夫だよ――――」


 戻ったアリスや万希子さんが、怯える彼女達に触れ、小さな声で励ます――。


「んああぁ、何でワタシがバカヴィーラヴと一緒の楽屋なんだよっ、腹立つぅ――」


 尚も毒を吐く――。


「あっ、聞こえちゃったぁ――まぁ、聞こえるように言ってんだけど――」



 話には聞いていた――しかし、これ程噂通りの性格の醜悪さとは想像していなかった。



「何を言われても相手にしない方がいいわ――ある意味、病んでいるから――気の毒に――――」



 ある時、礼子さんが哀れみの眼で私に言っていた――。


 だから、私もアイドール達も反応しないでいる――。


「ちっ、気取りやがって――たかがアイドルの分際でよっ――」

 私達が反応しない事に苛立ち、舌打ちを繰り返す――。


「ちっ――」

「ちっ――」



 彼女の名は、シフォン――――本名、生年月日等のプロフィールが非公開の歌い手。

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