アイ・ドール

 砂漠と化した世界で、アーティストがアイドルの種を貪り、頂点を極めた時代に彼女は産声を上げた――――やがて共食いを始めた彼らの世界を巧みに生き残り、現在においては、「最後の歌姫」なる称号を与えられ、アーティスト側の女王として君臨している――。

 醜い性格を覆い隠し、大衆を欺くのに余りある端麗な容姿――それは私から見ても美しく、羨むものだ――。


 自ら楽曲を創り、独自の世界観を創造し、女性層の支持においては未だにヴィーラヴさえ及ばない――。

 何故に、こんなにも性格が破綻してしまったのか――――ヴィーラヴがその原因の一部なのか――シフォンにとって、これまで築き上げた絶対的な地位をヴィーラヴというアイドル側の頂点に徐々に脅かされている事が気に入らないのだろうか――。



 シフォンの中に巣食う闇は、何か――――。




 生放送は何事もなく終了した――何度かヴィーラヴとシフォンが絡む場面もあったが、シフォンは楽屋で見せた本性を現す事もなく、ヴィーラヴと気心が知れた友達の様に会話し、笑顔を振りまき、あろう事かヴィーラヴに尊敬の念を抱いているなどと、嘘の言葉と表情を羅列した。

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