アイ・ドール
「すいません、シフォンさん――すいません――」
「そこんとこ、ちゃんとプロデューサーに強く言ったのかよ――――ったく使えねぇマネージャーだなぁっ――」
たかが、歌う順番の事で――――。
何だか虚しい感情が私を覆い、マネージャーに同情した――。
シフォンが、ヴィーラヴに敵対心を抱くのは、今日に限った事ではない――火種は以前から燻っていた。それでもシフォンの暴言にも、こちら側から抗議をするといった行動は起こさなかった――――ドロシーエンタープライズとしては、勝手にやっていればいい――というスタンスを貫いて無駄な争い事は避けた――。
ヴィーラヴに携わるスタッフ達は、シフォン側のスタッフとも交流があった為に、彼らの苦悩やシフォンに対しても言いたい事があった様だが、礼子さんが一切を禁止し、封じた――。
直接対決を望んだのは、シフォン側だった。
ヴィーラヴ6枚目のシングル発売、配信日に合わせ、シフォンも新曲を同日、発売した――。
これまでもシングル、アルバム発売日が重ならないよう日程をずらし、初登場1位という記録を互いに積み重ねる「配慮」があった。