アイ・ドール

「すいません、シフォンさん――すいません――」


「そこんとこ、ちゃんとプロデューサーに強く言ったのかよ――――ったく使えねぇマネージャーだなぁっ――」



 たかが、歌う順番の事で――――。


 何だか虚しい感情が私を覆い、マネージャーに同情した――。


 シフォンが、ヴィーラヴに敵対心を抱くのは、今日に限った事ではない――火種は以前から燻っていた。それでもシフォンの暴言にも、こちら側から抗議をするといった行動は起こさなかった――――ドロシーエンタープライズとしては、勝手にやっていればいい――というスタンスを貫いて無駄な争い事は避けた――。

 ヴィーラヴに携わるスタッフ達は、シフォン側のスタッフとも交流があった為に、彼らの苦悩やシフォンに対しても言いたい事があった様だが、礼子さんが一切を禁止し、封じた――。



 直接対決を望んだのは、シフォン側だった。

 ヴィーラヴ6枚目のシングル発売、配信日に合わせ、シフォンも新曲を同日、発売した――。

 これまでもシングル、アルバム発売日が重ならないよう日程をずらし、初登場1位という記録を互いに積み重ねる「配慮」があった。

< 261 / 410 >

この作品をシェア

pagetop