アイ・ドール
年間売上第1位のヴィーラヴが、シフォンや他のアーティスト、アイドル、司会者、観客達に深々と頭を下げ、感謝の言葉を述べている時にワイプ画面で抜かれたシフォンの表情は、誠意のない拍手と、笑顔とも憎しみともつかない複雑な顔と眼でアイドール達を祝福している様に私には見えた――――。
妙な雰囲気をシフォンから感じたのか、あの対決の結果に一切触れる事なく、司会者は粛々と番組を進行した――――。
「ったくよ、プロモーションがなってねぇんだよっ――」
執拗に悪態をつき続けるシフォン――別のスタジオのアーティストやアイドルが一人、一組とテレビ局を離れ始めている今に至っても、自身のマネージャーやスタッフに不満をぶちまけている――。
「なぁ――なぁっ、何でアイツらの曲が1位なんだよっ、ワタシの曲の方がイケてるだろっ――お前らもそう思うだろっ――」
周囲に同意を強引に迫るシフォン。
「それにしても、ふざけた名前っ――」
「ヴィーナス何ぃ――ラヴラヴだってさ――――センスねぇっつうの――バカじゃねぇの――――」
私のアイドール達を攻撃する。まるで子供だ――――。