アイ・ドール

「ラヴラヴって2回も繰り返してよぉっ、くっだらねぇ――」




「そこんとこどう思ってんだよっ、壁の向こう側の年間売上第1位の天狗アイドルさん達よぉっ――」



 アイドール達は静かだった――――。


「けっ――――」

「テメェ、お高く留まってんじゃねぇぞ、おらぁっ――」


「シフォンさん――」

 マネージャーの叫びと同時に、私達とシフォンとを隔てていた薄いパーティションの一部が蹴破られ、取りつけられていた鏡や照明の電球が割れ、床に破片が飛び散る――。


「きゃあああっ――」

 悲鳴がスタジオに響いた――。

 シフォンが蹴破った場所はアイドール達の陣地ではなく、妹グループの陣地だった――。


 しゃがみ込み、身を震わせている幼気な5人の少女を、血相を変えたスタッフ達が囲む。



「んあぁ――ちっ――雑魚アイドルの場所かっ――」

 こちら側に侵入したシフォンが、頂きから見下す様に吐き捨てた。

 眼力に圧倒され、固まるアイドル――。



「ふざけんなよ――」

 アイドル達を守る一人のスタッフが呟いた。


「テメェかっ――」

 スタッフを睨むシフォン。

< 264 / 410 >

この作品をシェア

pagetop