アイ・ドール
「ラヴラヴって2回も繰り返してよぉっ、くっだらねぇ――」
「そこんとこどう思ってんだよっ、壁の向こう側の年間売上第1位の天狗アイドルさん達よぉっ――」
アイドール達は静かだった――――。
「けっ――――」
「テメェ、お高く留まってんじゃねぇぞ、おらぁっ――」
「シフォンさん――」
マネージャーの叫びと同時に、私達とシフォンとを隔てていた薄いパーティションの一部が蹴破られ、取りつけられていた鏡や照明の電球が割れ、床に破片が飛び散る――。
「きゃあああっ――」
悲鳴がスタジオに響いた――。
シフォンが蹴破った場所はアイドール達の陣地ではなく、妹グループの陣地だった――。
しゃがみ込み、身を震わせている幼気な5人の少女を、血相を変えたスタッフ達が囲む。
「んあぁ――ちっ――雑魚アイドルの場所かっ――」
こちら側に侵入したシフォンが、頂きから見下す様に吐き捨てた。
眼力に圧倒され、固まるアイドル――。
「ふざけんなよ――」
アイドル達を守る一人のスタッフが呟いた。
「テメェかっ――」
スタッフを睨むシフォン。